それから1週間が経とうとしていた。
日が沈み真っ赤な夕日が空を染める。鳥たちが楽しそうに園の空を飛び回っていた。どんどんと保護者が園児達を連れに来る。そんな時だった。卓也は背後からトントンと肩を叩かれた。振り返ると、そこには1人の女性が立っていた。黒い髪に工場らしきロゴの入った帽子、服装は作業着だった。
卓也はその女性が誰であるか理解するまでに数秒の時間を要した。そして、卓也の表情が満面の笑みに変わる。

『立花さん!?』

卓也は思わず抱きしめそうになった。立花は帽子の先をクイッと摘んで『似合う?』とベロを出して笑った。

『最高に綺麗です!』

卓也は本心でそう答えた。

『ふふふ。じゃあ今度は断られないかな?』

『あ…いや…』

『冗談だよ。でも、絶対、後悔させてやるからね。』

立花は本当に綺麗な笑顔を見せた。
卓也は、最近の陸がワガママになった原因が分かってホッとした。今までは、どこか無理をした元気に見える時があったが、最近は子供らしい元気で溢れていた。