「えー、またキス未遂?」





桃佳が驚いて言う。





「うん。なんでだろね。なんでキスしてくれないのってよりも、なんでキスしようとしてくれるのか、だよね」




「うーん。キスって、好きな人にするものでしょ?汐里ちゃんが『特別』だからじゃない?」




「でも、してくれないってことは、壁を越えようとはしてくれていないってことだよね?」




「うーん……難しいね。少なくとも、『大事』って言ってもらえたんでしょ?やっぱり、『特別』な存在なんじゃない?」





禅問答みたいな会話をしていることに気づき、わたしはため息をつく。





「どっちにしろ、わたしが退院したらもう終わりだよ。会えなくなるんだから」




「それに関してはいいアイデアがある」





桃佳が胸を張って言う。