吉原さんは両手でわたしの頬を挟むと、その顔を近づけた。 あ、今日、マスクしてない。そう気づいたのはたった今で。 ゆっくりと顔が近づいてきて……。 わたしは目を閉じた。 待っているその唇の感触。 うっすらと目を開くと、吉原さんが切なそうな目でわたしを見ている。 その顔を見てわたしの胸も痛くなる。 「吉原、さん?」 「ごめん」 吉原さんはそういうとわたしの頬から手を離した。