「汐里ちゃんには僕、救われてばっかだなあ」
「わたし何にもしてないよ」
「汐里ちゃんの最大の武器はその笑顔だよ。いつも笑っていて」
そう言うと吉原さんは握っていないほうの手で、わたしの手をそっと離した。
「じゃあ、またね」
吉原さんが部屋を出ていった後も、彼の手の感触がまだ残っていて。
すこし冷たい、大きな手。
天井に自分の手をかざすと、深呼吸をする。
息の吸い方もわからなくなるくらい、吉原さんのことが好きだ。
重ねた手を胸に当てる。
わたしはたぶん、今月いっぱいで退院する。
吉原さんとはもう会えない。
この気持ちもいつかは遠い思い出になって消えてゆくのだろうか。

