「ねぇ、一輝は、子供……好き?」


山根主任の顔が浮かび、思わず聞いてしまった。


「あぁ、子供は好きだな。本社に居た頃、休みの日は近所の悪ガキ集めて公園でバスケしてた。外人の子は目がクリクリしてて可愛いぞ~。

俺にもあのくらいの子供が居てもおかしくないんだって思ったら、余計可愛くてな……」


一輝が子供好きとは知らなかった。なら、やっぱり、産むのを躊躇してるのは山根主任の方なのかな?


「……自分の子供……欲しい?」

「自分の子供か……欲しいな。俺は親も兄弟も居ないから、血の繋がった家族を持てたら幸せだろうな」


その言葉を聞いた瞬間、胸に鈍い痛みが走った。


「だったら……なぜ……」山根主任と結婚しないの?って言おうとしたのに、どうしてだろう……その一言がどうしても言えなかった。


「んっ?なんだ?」

「うぅん、なんでもない」


もしかして、私、一輝を失いたくないとか思ってる?まさか……そんなの有り得ない。私には雅人さんが居るんだから……


そう否定したけど、自宅の惣菜屋の看板が視界に入ると、その気持ちが更に強くなっていく。


このまま、もう少しだけ、一輝の背中を抱き締めていたい……


「ホタル、この調子じゃ明日の仕事は無理だな。休んで大人しく寝てろ。明日休めば土日で3連休だ。週明けには良くなってるだろ?」

「有難う。優しいんだね……一輝」

「バーカ!俺は優しいんだぞ。今、気付いたのか?」

「……うん」


夫婦だったのに、私、一輝の事何も知らなかった様な気がする……