ヤダ……私ったら、なにシンミリしてんのよ!今更、一輝にこんなの貰っても嬉しくもなんともない。そう、私はもっと素敵なプレゼントを貰ったじゃない。


薬指のダイヤのリングをソッとなぞり頷くと、勢い良く立ち上がる。


こんなの貰う理由がない。これは一輝に返そう。


そう思い階段を下り居間に向かうが、一輝は既に出社した後で、仕方なくネックレスをバックにしまい家を出た。


出社すると、私はすぐに雅人さんに今日のアポの件を話し同行をお願いした。一輝にあんな事言われ、さすがにひとりで行く勇気がなかったから。


「えっ?数千億円の絵画?」

「はい、私だけではちょっと不安で……同行して下さい」

「あ、あぁ……でも、僕は……」


歯切れの悪い返事を返す雅人さんに声を掛けたのは一輝だった。上司の一輝に同行するよう促され、渋々って感じで立ち上がる。


雅人さんの態度に少し違和感を覚えたが、私も緊張してるからそれどころじゃない。


運送会社に向かう社用車の中で、昨夜一輝に言われた事を、さも以前から知ってたみたいに雅人さんに説明すると、彼が段々無口になっていく。


「あの……雅人さん?なんか顔色が悪いけど、大丈夫?」

「う、うん、平気だよ」


って言ったのに、運送会社の社長の説明が始まっても、彼は一言も喋らず下を向いたまま。焦った私は必死で社長の説明に頷きメモを取る。


もぉ~雅人さん、いったいどうしちゃったの?