本当の事を言った方がいいのかなって思ったけど、私と一輝が結婚しないと分かったら、ママが父親との結婚をやめると言い出すんじゃないかと心配になる。


そんな事になったら、父親はショックでどうにかなっちゃうかもしれない。辛いリハビリも、ママが一緒だから頑張ってるんだよね。


「どうしても、私が結婚するまでは無理なの?」

「そうね、でも、蛍子ちゃんが気にする事じゃないわ。あなた達の結婚も、そんな先の事じゃないでしょ?」

「う、うん……まぁね」


一輝の事、言えなかった。父親を悲しませたくなかったから……



―――翌日から、私は会社に行くのが苦痛で堪らなかった。


一輝はインフルで休みだから顔を合わさずに済んでるけど、一番関わりたくない新田係長とは、話しをしないワケにはいかない。


もうアクセスを辞めちゃおうかとも考えた。でも、あの運送会社の件が終わるまでは無責任に辞めるワケにはいかないし……


取り合えず新田係長を避け、毎日、営業に出る日々が続いた。


そんなある日の事。珍しく新田係長が朝から出掛けて行き、久しぶりに会社に残ってプラン書作りに精を出していると、楓ちゃんが営業から戻って来てランチに誘われた。


楓ちゃんが前から気になっていたという洋食屋さんに連れて行かれ、席に着いたのと同時にあの話しになる。


「彼の電話とか、コッソリ聞き耳立ててるんですけどね~なかなか情報収集出来なくて……」


歯がゆそうに眉を顰める楓ちゃんに、私は「もう、その事はいいよ」と呟く。