―――それは、ベット横のデジタル時計が午前0時を表示した直後、彼が言った言葉。


「29歳の誕生日、おめでとう」


そう、たった今、私は29回目の誕生日を迎えた。


既にめでたいという時期はとうに過ぎ、恐怖の日と化していた誕生日。まさかこの不吉な日に、彼からプロポーズされるなんて……


にわかには信じられず、探る様に聞いてみる。


「ホント……に?」

「もちろん本当さ」


すると、ドアをノックする音が聞こえ、なぜか頼んだ覚えのないルームサービスが到着した。


彼が微笑みながらベットまで運んできてくれたワゴンの上にあったのは、高級シャンパンのドンペリと大きなバラの花束。


そして、手渡されたシャンパングラスの中には、光り輝くダイヤのリング。




―――もしかして……これって、"サプライズ"ってヤツですか?