8時にホテルのロビー?会社じゃないんだ……


「分かりました。時間を取って頂き有難う御座います」

『いやいや、そちらも早い方がいいでしょ?』

「あ、はい。では、お会い出来るのを楽しみにしております」


親切そうな人で良かっなと思いながら電話を切り、新田係長に報告を済ませると書類を揃えプラン書の作成に掛る。


殆どの社員は営業に出掛けて行き、オフィスに残っているのは数える程しか居ない。そして、12時を過ぎると残っていた社員もランチに行ってしまい誰も居なくなってしまった。


私はというと、切りのいい所まで頑張ろうとランチ返上でひとりオフィスに残り、パソコンと睨めっこ。


顧客を紹介してくれた新田係長の為にも、より良いプラン書を作らなくっちゃ……


そして、もう少しで完成するって時だった。パソコンの横に、コンビニの卵サンドと白桃のジュースが遠慮気味に置かれた。


「えっ?」


ふたつとも私の大好物。それを知ってるのは、もしかして……


そう思い胸踊らせ振り返ったんだけど、そこに居たのは一輝ではなく――「あっ……奥田主任」


「頑張ってるね。でも、ちゃんと食べないと頭の回転が悪くなるよ」

「す、すみません……」


恐縮してペコリと頭を下げるが、どうして?という疑問が湧いてくる。私の大好物を、なんで奥田主任が知ってるの?


でもすぐに、たまたま偶然だろうと思い直し、お礼を言って遠慮なくサンドイッチに手を伸ばすと、奥田主任が誰も居ないオフィスをグルリと見渡し、小声で囁く。


「……気を付けた方がいい」