一輝の足音が近づいて来たと思った次の瞬間、眺めていた雑誌は奪い取られ、無防備だった私は抵抗する間もなく強い力に押されて後ろに倒れていく。


勢い良くベットに沈み込んだ体がその反動でフワリと浮き上がり、一輝の柔らかい髪が私の鼻先をくすぐった。


久しぶりに一輝の香に包まれ、愛しさが溢れ胸が疼く。そして、その鋭い熱視線が私の心を揺り動かす。


「一輝……」


両手首をベットに押さえ付けられていたけど、抵抗しようと思えば出来たかもしれない。でも、私はソレをしなかった。


だって、彼と密着してる部分が燃える様に熱くて……私の体は、一輝に触れられただけでこんなにも感じ、彼を求めていたから……


素っ気ない態度は好きの裏返し。私は新田係長に嫉妬していたんだ。そんな事、初めっから分かってた。私は傷付く事を恐れていただけ。


本当は、一輝の事が好きで好きで、堪らなく好きで……この温もりを失いたくないと思ってた。彼を誰にも渡したくないと思ってたんだ……


このまま意地を張り続けて一輝と別れたら、私は一生、後悔するかもしれない。


そう思ったら急に怖くなり、自由を奪われた手をギュッと握り締めていた。


新田係長との事は、一時の気まぐれ。魔が差しただけなんだよね。一輝が好きなのは私だけなんだよね。


それを確かめたくて、彼の瞳を見つめ口を開く。でも、私の肌に何度も触れたその唇から出た言葉は―――甘く優しい言葉ではなく……


「―――もう、いい……」

「えっ?」

「そんなに俺が信じられないなら、もう、いい」


―――拒絶だった。