時折漏れる私の声とシーツが擦れる音。そして一輝の息遣いだけが聞こえる部屋は、現実世界から切り離されたふたりだけの空間。


一輝から与えられる刺激に私の意識は朦朧とし、気付けば、羞恥という名の理性を手放していた。欲望の赴くまま、ただひたすら一輝を求め快感の波に呑まれて行く。


雅人さんの時は常に可愛い女を演じ、こんなに乱れる事などなかった。けど、一輝とのソレは、演じる余裕さえ与えてくれない激しい情事。


ついに彼の体温と私の体温がひとつなった時、何かが弾けた様な感覚に襲われ、全身が小刻みに震える。


10年前とも違う。こんなの……初めて……


そう思った時、やっと一輝が私の名前を呼んだ。


「ホタル……聞こえるか?」


その低く響く声は私の五感を刺激し、痺れる様な感覚が更に体を熱くする。だから堪らず彼の唇を人差し指でなぞり、子供の様にねだっていた。


「うん、一輝の声……好きなの。もっと聞かせて……」


そして、次に一輝が言った言葉は―――今、私が一番聞きたがった言葉……


「―――もう一度、結婚しよう」


結婚……


それは、間違いなく彼からのプロポーズ。その直後、私と一輝は同時に登りつめお互いを強く抱き締める。


「お前の希望どおりプロポーズしたぞ。返事は?」


上気した一輝の額から零れ落ちた雫が私の胸の上で弾けたのと同時に、素直な気持ちが言葉となって溢れ出す。


「私……もう一度、一輝の奥さんになりたい……」