「頑張るって……」
見ず知らずのオッサンに応援されて、その気になるのもどうかと思うんだけど……
いくら一輝でも、まさか本気でそんな事思ってないだろうと軽く受け流す。
そうこうしてる間に動き出した車が次の交差点を右折し、スピードを上げ、どんどん細い裏道へ入って行く。
渋滞に巻き込まれるのが嫌なのは分かるけど、こんな細い道をクネクネ走っていたら、ドライブって気分になれないな~
だから、ようやく住宅街を抜け広いバイパスを走り出した時は、やっとドライブっぽくなってきたってテンションを上げた。でも……なぜか急に車がバイパスを降りる。
そして、吸い込まれる様に入って行った場所は……
「ちょっと、ここラブホじゃない!」
「さすがに社用車で都内のホテルはマズいからな。ここなら大丈夫だろ」
「全然大丈夫じゃないでしょ?今は仕事中だよ。次長が部下をこんなとこに連れ込んでいいの?」
「昼休みだ。気にするな」
めちゃくちゃな理由を付け、平然と車を降りて行く一輝。抵抗空しく助手席から降ろされた私は、そのままホテルの部屋へと連れて行かれた。
昼間っから、それも仕事中にこんな事していいんだろうか?と、私はまだ戸惑っていた。でも、一輝はさっさとシャワーを浴び、余裕の表情で煙草に火を点けている。
「ホタルも早くシャワー浴びてこいよ」
「う、うん……」
ここまで来て拒否するワケにもいかないか……それに、私は一輝が好き。彼を拒む理由はない。
自分の気持ちに素直になろうと覚悟を決めバスルームに入って熱めのシャワーを浴び始める。が、立ち込める湯気の中で、ふと頭を過った小さな疑問。