「まさか。私は一人いれば十分だよ」


「ですよね。あんな風に色んな女性を好きになるなんて、その気持ちが理解できない」


「でも、あれがあの頃というものだったんだろう」



「え?」



「当時は一夫多妻制だからな。

男性は女性からの愛を一身に受けるのに、女性は愛を自分だけのものにはできない。

それどころか、男は何人も恋人や妻を作るのに、女は夫以外の男と通じることも良しとされない。

時には望まぬ関係を強いられることもある。それがあの時代なんだろう」



「そんな……」


わたしは胸をぎゅっと掴んだ。


「そんなの……すごく悲しい」



「紫式部も、ひょっとしたらそういう気持ちを書きたかったのかもな」


「え?」