「うぇ、気持ち悪い‥酔った‥」

「お前なぁ‥自分でやった癖に」

口調はキツイが、頭を撫でてくれる手は優しい。


「先輩、なんで」

「ん?」

「なんで私なんですか」

机に顔を伏せたまま聞く私はズルいと思う。
赤い顔と泣きそうな目を隠せるこの姿勢は今の私にはとても楽だった。

「一目惚れ、だな」

「じゃあすぐ飽きちゃいますね、一目惚れから始まる恋は長く続かないって決まってるんです」

「誰か決めたんだよ、俺はよそ見しないタイプだから」

先輩はいつも嬉しい言葉ばかりくれる。
私は酷いことばかり言ってるのに。


「先輩、今私酔ってます」

「知ってる」

「酔ってるんです」

「うん」

「‥すき」

「うん」

頭を撫でていた手は肩に回されていて。
机に顔を伏せていたはずなのに、いつの間にか先輩の肩に伏せていて。

私は先輩の背中に腕を回していた。