手に持っていたものはやっぱり刃物で
「やめてっっ!」
男がその手を振り下ろしたのと、私の足が男の腹部にめり込んだのはほぼ同時
カランッ
カラカラカラ
ナイフが地面に落ちる
刃先に血は付いて……いない
「ぐっ…」
ちょうどヒールの部分が鳩尾に入った男は苦しそうに後ずさる
でも、私の蹴りでくたばるほどヤワじゃないらしい
「澪っ」
「悠雅…大丈夫?」
「それはこっちのセリフだろ…
悪かった…」
私に怪我がないことを確認して安心した表情を見せたのも一瞬
次の瞬間には人1人余裕で殺せそうな目で、私の蹴りを受けた男を睨みつけていた
「おい…」
ゆっくりと詰め寄る悠雅に、男はもう恐怖しか感じないらしい
「わ…悪かった
もう…手出ししない…
だから…助けてくれ」
「お前、総長がどーのこーの言ってたよな?
どこの族だ?」
「…それは…」
バキッ
「くっ…」
「答えないと…」
「劉霞です!」
「あ?」
……劉霞って…
「嘘をつくな
あそこならとうの昔に倒した」
「う…嘘じゃないですっ
1度倒された後、岡さんを総長に復活したんです。
正当な族を目指そうって…」
「岡って……」
「あいつか…」
私と悠雅の声が重なる
「んで、俺ら聞いたんだよ
天童組が劉霞を見捨てたのは碓氷組若頭のせいだって
岡さんもアンタに倒されたって
だから俺たちアンタを倒そうとっ」
………なるほど
なんとなくこの人たちの言ってることが分かった気がする
けど
「お兄ちゃんは劉霞を見捨ててなんかいないわよ」
……だって、見捨てるもなにも
お兄ちゃんは交戦の後碓氷組に監禁されてたんだから
「は?…え
お兄ちゃん?」
混乱し出す男が面白くて少し笑いそうになるも
「私、瀬織 澪
貴方達が見捨てられたと思っている天童組の若頭、瀬織 興の妹」
「き…聞いてねぇー」
……何にも調べずに襲いに来たわけね
岡さんの話だけを頼りに
ほんと…この人達…
「バカだねー
俺そんな風に喋った覚えないけどなー
勝手に話盛らないでほしいね」
……この声…
「総長!」
「岡さん…」

