春、ざわざわとしている2年B組。先生が教室に入ると、そのざわめきは今まで何事も無かったかのようにピタリと止む。
先生の合図で1人の少女が入ってくる。この高校のではない制服を着ているのを見て、一瞬で転校生なのが分かった。
しかし、それよりも前にみんなが思ったはずだ。彼女が美人であることと、あの大物女優に似ていることを。
彼女は、軽く自己紹介をし、先生に指定された自席へと向かう。その瞬間、みんなが彼女を見る目は、希望・期待のまなざしから、哀れな目と変わる。
彼女がそれを察しないはずが無かった。何が原因かは、しばらく分からなかったが、自分の席の隣の人を見てようやくわかった。
窓側で一番後ろの席にいる彼は、前回に開いた窓から外を見ている。そして、なんともだらしない姿勢。机に足。授業前なのに耳にはヘッドフォン。口には風船ガム。まあ、いわゆる問題児というやつだな。
「お前は何しに学校に来ている?」
彼女の第一印象はそれだった。
でも、彼女は問題児を気に留めることはなかった。
周りはそれを変に思っていたが、しばらくして、理解した。
彼女は、クール。話しかけても返事を返そうとしない。本ばかり読む。人と会話する様子を見たことがない。美人以外の良いところが、はっきり言ってわからない。
周りはこういう印象を持っていた。
まあ、無理はないだろう。
彼女にはどうしても隠さなければならないことがあったのだから…