「静、無理矢理はだめ。蓮が困ってる。」
「……ケチ基樹。」
「静?」
ドス黒い笑顔を見せた基樹さんに、静さんは膨れながらも、俺の隣で足をバタバタさせることで落ち着いた。(だからといって、バタバタさせるのはどうかと思うが……)
パタパタと音がしたかと思えば、千歳と呼ばれた少年が戻ってきた。
「仁、次入っていいよ?」
「おおきに。」
簡潔にいえば、千歳という少年は、
――美少年だ。
黒に金メッシュのサラサラな髪、白い肌、華奢な体と小さな背。
葵さんと並ぶくらいの女顔と美少年っぷりだ。
すると、パチリ、と目があった。
「……ん?……ああ、なんとか蓮くんだっけ?」
「小波渡 蓮、です。」
ああ、小波渡か!と一人納得した千歳さんは、俺に向き合う。
「俺、Alice特殊係、チェシャ猫こと椎名千歳。よろしくにゃー。」
猫、その言葉はあまりにも千歳さんに似合っていた。



