「うーたちゃん!起きて!」
「んん……」
自分を呼ぶ声に、意識が浮上する。
眩しい。光が、眩しい。
ソファーで本を読んで…ああ、それから寝てたのか。
上半身を、ゆっくりと起こす。
目の前には、端麗な顔立ちの男。
「……チェシャ猫」
「あ、ここはマイホームだから名前でいいんだぜ?お茶会もうすぐはじまるにゃぁ」
チェシャ猫もとい、椎名 千歳(シイナ チトセ)。
千歳は金メッシュの入った黒髪を、ぶるぶると揺らす。
コードネームの通り、猫みたい。
千歳に急かされ、部屋の中央にある長テーブルの端から二番目の椅子に腰を下ろす。
千歳は俺の隣、テーブルの一番端に座る。
「うたちゃーんおっはー」
チェシャ猫の向かい側に座っていた、帽子屋もとい遊佐 仁(ユサ ジン)が気だるげに挨拶してくる。