「う"ぅ……ぐすっ。」
無駄に広い家、庭。
俺はその無駄に広い庭でめそめそと泣いている。
幼いころの記憶。
木の陰に、膝を抱えて座る幼い俺。
「うーたや!」
そこに現れるのは、いつも決まって、自分の片割れ。
双子の兄貴。
「おうせぇ……」
「なくなって。にいちゃんはおまえのみかただぞっ!」
双子の兄――桐谷逢瀬(キリヤ オウセ)に抱きつく俺――桐谷唄也(キリヤ ウタヤ)。
なんで泣いてたか、なんて理由は今では全く覚えてない。
泣き虫で無口で人見知りで……。
そんな俺とは正反対だった逢瀬。
双子なのに可笑しい、と幼いながらに何度も思った。
――嗚呼。懐かしい。
今ではもう、考えられない。――――