翌日。

今日は校内オリエンテーションとクラスの親睦を深めるレクリエーションの予定だった。


「ねぇ、睦月。部活決めた?」

話しかけてきたのは飛鳥伊織。
クラスメイトで、ついさっき行われたレクリエーションで仲良くなった女の子。

「うん、決めてる。伊織は?」

「私も決めてる。」


今は部活動紹介のDVDを視聴覚室で見ているところだ。

(眠い。)

薄暗い部屋で見るDVDほど、眠くなるものはない。
特に部活を既に決めている人にとっては尚更だ。


「何部?」

「演劇部。」

「睦月、演劇やるんだ。すごいなぁ。」

「すごいのかな。伊織は?」

「私は軽音楽部だよ。」

「そっちの方がすごくない?」


楽器とは無縁に生きてきた私にとって、音楽系の部活は未知の世界だ。
小学校の頃のリコーダーすら苦手だったのだから。
もちろんピアノもダメだし、軽音楽部の使うギターやベースと言ったものに関してはお手上げ状態。


「大好きだからね。」


聞けば中学時代からずっとベースを担当してきたらしい。

(楽器演奏出来る人ってすごい。)


自分のできないものを出来るということは、それだけで尊敬の対象となる。

私にとって伊織は音楽面において尊敬の対象となった。