(どこに行くんだろ‥‥。)

歩くこと5分。
校舎を通り抜け、体育館を横切り、やって来たのは。

「‥‥旧校舎?」

塗装は剥げ、所々草のツルが伸びている。
生憎の天気も相まって、怪しい雰囲気を漂わせていた。


「ご名答。」

私の呟きを拾った彼がそう言う。

「どうしてこんなところに?」

「すぐにわかるさ。遅くなったが自己紹介を。‥‥如月旭。隠坂学園演劇部の部長だ。」


‥‥‥‥。


「えぇ!」

この人が‥‥演劇部の部長‥‥。

「なんだその反応。失礼なやつ。」

「‥‥全然そんな風に見えなかったので。」

「良く言われるがこんなにストレートに言われたのは久しぶりだ。気に入った。」


‥‥気に入られた。


「遊佐、演劇部に入らないか。」

真剣な如月先輩を私も見つめ返す。
そして一言。


「そのつもりでここに来たんです。」


演劇をやりたくて隠坂に来たのだ。


「…そうか。」


つい、と彼は足を進め重たそうな扉に手を掛ける。


グッと押すとギィという音と共に扉が開く。



「…ようこそ、我が演劇部へ。」



隠坂学園入学初日。
こうして私は演劇部に入部することとなった。