「ねーぇ、新入生?」

「‥‥新入生ですけど。」

入学式の日。
入学式の終了と共に外に出た私に、馴れ馴れしく話しかけてきた不審な男。
‥‥もとい先輩。


なんなんだこの人。
胸元の[入学おめでとう]のリボンのついた花が見えないのだろうか。

「何組?」

「‥‥1組です。」

「1組か。遊佐睦月ってやつ知らね?」

遊佐睦月。
私の名前だ。

同姓同名がいないのなら、100%私のことだろう。

「私、です。」

明らかに上級生と思われる男と、新入生の私。
出入り口付近で話しているものだから、段々と視線が痛くなってきた。


「ほー‥‥。」

ほー、て。
なんなんだ一体。


「唯一の特待生だな。」

「‥‥‥‥なんの御用ですか。」


私はさっさと帰りたいんだっ。


「まぁ、聞けよ。うちの王子がお前を探してる。」

‥‥‥‥‥‥王子?
私のこれまでの知り合いに王子なんていたっけか。

「細かい話は後だ。この後暇か?」

「暇かと言われれば暇ですけど‥‥。」

「じゃあ来い。」


私はそのまま校舎の中に連れて行かれてしまった。