「あららぁ。我慢してたのね。大丈夫だからねー」
そう言いながらおばあさんは泣いている朱里亜の背中をトントンと優しく叩いてくれた。



”大丈夫だからね。”
今の朱里亜にとって、一番温かくて、一番安心できる言葉だった。
だから、すごく嬉しくて涙が止まらなかった。


「うぅ…っ……すい…ません……ぅ…っ」



「ばあちゃんも若い時はたくさん泣いたよー?あんたは優しいから人一倍隠れて泣く子やろう?けどね。泣く事は悪い事じゃないからね。たくさん泣きなさいね」
おばあさんはそう言ってくれた。

朱里亜が泣き止むまで、ずっとおばあさんはトントンと背中を優しく叩いてくれてた。



「すいません…」
落ち着きを取り戻した朱里亜がおばあさんに謝る。
おばあさんはニコリと笑い、
「いいのよ」
と優しく言ってくれた。



それから少し世間話をして、おばあさんとは別れた。



夕日が沈みだした頃、朱里亜はまた地元へと帰り、今日はまっすぐに帰宅した。



家に帰り、リビングに行くと「おかえり!」というお母さんの声に何故か涙がまた溢れそうだった。




レイプされて、体が傷ついた。
心もボロボロに傷ついた。
手首もボロボロで、殴られた所は未だに腫れている。
そして、知らない男に初めてを奪われ…、もう綺麗だった体には二度と戻れないと思うと苦しくて死んでしまいたくなる。





それでも。
変わらない毎日がくるんだな…と、お母さんの声を聞いてふと思った。







何もなかった事にはできないけど、少しづつまた元の生活に戻れるように頑張ろうと朱里亜は思った。








おばあさん。
お母さん。
ありがとう…。