目的地へは、あのときとは違って腹が立つぐらいなにも問題なく着いた。イヤホンを片付け、キャリーバッグを引き、個室から出ていく。
天井の方からは到着時のアナウンスが流れていた。
出口の方には降りる人が列を作っている。
その最後尾に並び、何度見たか分からないが、私は手紙をまた見返した。
文面には消しゴムのあと、インクのあと、なぜか醤油の跡も滲んでいる。
そして、真ん中に大きく、単純な一言が書いてあった。

『大好き』

彼が最後に送った、珍しい恋じみた言葉だ。

「ごめんね。」

心の中で、そう謝る。
無愛想な彼女なんて最悪だったでしょ。

「寂しいよ。」

もう、あなたに会うことが出来ないなんて。

「私も大好きだよ。」

この先で、私はあなたを忘れなきゃいけないと言われたけど

もう少し、あなたを覚えさせて。