特ダネには真実を

「目的って………。取材先の人に貰ったんですよ。他意はないです。」



潮がそう言っても、薇晋はまだ微妙な顔だ。



「……それ、貰ったのは偶然ですけど。薇晋さんに何かお礼しなきゃなーと思ってたので。まっ、貰ってくれたら嬉しい…です。」


「何かお礼って、俺は南能に何もしていないが…?」



潮にお礼をしてもらうようなことに、思い当たる節が薇晋には無い。



「墜玄さんの件ですよ。先輩と私を助けてくれたことも、名前出さなくしてくれたことも。……もう、とにかく全部にです!」



事件後、言葉では感謝を伝えたものの、潮には些か薄っぺらく感じていた。


それほどに、薇晋に対して、そして警察に対して、潮の中には信頼が生まれていたのだ。



「南能……。気持ちは嬉しいが、警察として当然のことをしたまでだ。……まあ、ほんとは、襲われる前に対処したかったんだがな。」



後手に回ったことが悔しかった。



警察である自分達が、もう少し気付いて何か出来ていれば、もう少し早く潮の信頼を得ることが出来ていれば。


潮が一人で、碣屠實に会いに行くという無茶をすることも無かっただろうから。