特ダネには真実を

「ゃ………………め…」



潮は必死でもがき抵抗する。


手に持っていた鞄を振り回した拍子に中身が散乱しシートベルトも外れるが、首にある手を外すことに必死であまり意味をなしてくれない。



「黙れ、黙れ、黙れ………!」



力が増す碣屠實の手に対し、潮の意識は段々遠退いて。


首にある碣屠實の両手を外そうと重ねていた手の力も弱くなる。



「………、…………、……………」



力を無くし滑り落ちた右手が、何かに当たる。



「(せ、んぱい、の……)」



それは鞄から飛び出した、秀滝から貰った催涙スプレー。


秀滝の顔が過る。



「(た、すけ、て、…せ、んぱ、い……………!!)」



プシュー………―――



運良く手に出来た催涙スプレーをデタラメに噴射する。



「ぐ、ゎっ……!!」



「(いま、だ…!)」



バンッ――……



噴射された催涙スプレーが碣屠實を襲い、首を絞めていた両手が外れた。


考えるより先に車のドアを開け、潮は外に転がり出る。



特ダネにもすぐ出ていけるようにといつもの癖で、ドアのロックをしていなかったのが功を奏した。