「な、なに怒ってんの?碣屠實墜玄のこと、そんな贔屓にしてたっけ?」



滅多に見ない潮の怒りっぷりに、幄倍は驚いた。



「ひ、贔屓というか……、事実確認もしないで政治部がとやかく言うのは、記者としてどうかと思ったんですよ。」


「あ~成る程ね。」



我ながら苦しい言い訳かと思ったが、幄倍は気付かず納得してくれたようで潮は安心した。



「あ、墜玄さん?ごめんなさい忙しい時に。ちょっと聞きたいことがあって。」



空き時間、潮は碣屠實へ電話をかけていた。



あの場では誤魔化したものの、幄倍の言ったことが気になったのだ。


気になったら確かめずにはいられない、記者の悲しい性だななどと潮は内心ごちる。



『聞きたいこと?ちょっと待って…………いいよ、なんだい?』



少しの間を置いて、電話の向こうで聞こえていた雑音が消えた。


部屋かどこかへ移動したようで、碣屠實以外の声は聞こえない。