「……わかった、どうぞ」
断ってしまえば良かった。でも断る理由もなかった。
金網の隙間から齧った跡のあるアイスをそっと差し入れる。手が震えそうになって金網に当たりかけ、内心ヒヤヒヤした。
手首まで通した瞬間、アイスの棒を持ったその手を上から掴まれた。ふわっと塩素の香りが漂う。
「えっ……」
自分ではアイス自体を手渡すつもりだった。
けれど握りこぶしに重ねられた手は有無を言わさず強引にそのまま彼の口元へと持って行かれる。
さくり。
はっきり残っている自分の噛じり跡の上。大きめの欠片が彼の口へと消えた。
その瞬間掴まれた手に冷たい感触が落ちる。見るとアイスの破片が指の上に流れ、薄いピンクの水滴を作っていた。
「あ、ごめん」

