「西宮さん、髪にホコリがついてる。取ろうか?」
噂をすれば現れた。山木くん。
いや、別に噂になんてなってないけど。
放課後、1人で帰ろうとしたらいつものごとく現れた山木くん。
何故か私の目の前で仁王立ち。
随分と偉そうだ。
「結構です。ホコリとかついてても気にならないんで」
「いやいや、周りが気になるから。ほら、遠慮しないでさ」
そう言って何故か私を包み込むように頭に腕を回し、顔をすぐ近くまで持ってきてホコリを取った。
ち、近い。
「はい、取れた」
誰も取ってくれとは言ってないんですけどね。
「どーも」
私は山木くんの顔を見ずにスタスタと廊下を歩いて行った。
早く、早く帰りたい。
そして、早く、自分の頰の熱を取り除きたい。
なんで、なんで山木くんはあんなにも顔を近づけて来るんだ。
そういうのに慣れてないせいか、私は山木くんにそういう事をされるたびに顔が熱くなる。
そして、それを見られて山木くんは私をからかう。
それが1番の屈辱なのだ。