相合傘

あたしの隣には泰牙君と涼君がいた。


涼君の隣には郁未。


向かい側には逸樹君、リナ、春、ルリの順番。



離れられた安心感と、なんとなく寂しい気持ちがあたしを襲った。




──

「なんか歌う?
未弥ちゃん」


隣にいる泰牙君があたしに歌本を差し出す。


「あ、あたしは後でいいよ…」


今はとてもじゃないけど歌う気分じゃない。


泰牙君はそっか、と言って自分で歌本をペラペラとめくり始めた。





しばらくぼうっとしていたとき、

「みゃーちゃん、大丈夫?」

隣で涼君が心配そうに顔を歪めているのが目に入る。



「あ、大丈夫だよ。」

決して上手くはないだろう笑顔を作った。


大丈夫。


その言葉は自分の心にも言い聞かせている。



わかっていたことじゃない。


もうあたしのことなんか興味ない、


忘れられているんだって。



わかっていたじゃない。


納得は出来なかったけど、ちゃんと事実は認めていられたじゃない。



だけど、どうにもならない寂しさと悲しみ、


昔を悔やむ自分を


押さえきれなかった。