相合傘

目の前には、表情ひとつ変えない春。


あたしの方なんて、見向きもしない。



…なんでだろう。


なんで春がいるんだろう。

勿論、涼君と仲いいんだからいてもおかしくはない。

だけど、出会いを求めるんだったら、もっと楽しそうな顔してない…?


訳わかんないよ。




…あたしのこと、今も気付いていませんか?


それとも、気づいているから不機嫌なのですか?




──
「じゃあ、自己紹介でも。
2組の柳瀬涼太です。
はい、次」


涼君の言葉を筆頭にみんなが自己紹介を始めた。



「同じく2組の葛城泰牙です!」


「同じく中野逸樹です!」


「…丹治春樹」


みんなが明るく自己紹介をする中、春だけはぶっきらぼうにそう言い放った。


「可愛げねぇなあ」

涼君が場を盛り上げようとそう笑うが、


「うっせー」

と春はまたも冷たく返すだけ。



春って、昔からこんなに冷たいひとだったっけ…?




そんなことを頭で考えているうちに郁未が口を開いた。


「じゃあ、次女子ね!
リナからどーぞ」


多分、郁未と涼君が幹事なんだろう。


そして、きっとこれは一種の、合コンと呼ばれるやつだ。