ーー七月七日 月曜日 今日のお天気は、
テレビの中から聞こえるアナウンサーの声に、チリリリリリとなり続ける目覚まし時計の音。
ー今日は曇り後雨。雨は午後から夜にかけてー
パチッと音がした。
天気予報の画面は突然真っ暗になり、目覚まし時計の音だけがチリリリリリと部屋に響き渡っていた。
そんな中ベットの中がもぞっと動き、布団の中から手が出てきた。
その手は何かを探しており、目覚まし時計のそばを行ったり来たり。ようやくその手は目覚まし時計を捉えボタンに手をかけた。
「・・・あー。テレビつけっぱで寝ちまったのか。」
この部屋の主であろう青少年は布団の中から身体を起こしながらテレビの電源をいれた。
電源をいれたテレビを見て、欠伸をしながら背を伸ばせばボキボキと骨が鳴る。さらに左肩に右手をかけ首を鳴らす。
ーー今日の運勢1位は乙女座のあなた!ーー
青少年は運勢占いに変わってるテレビを見てボーとしていた。
乙女座が1位なのか。乙女座か。乙女座って俺じゃん。なんて、いつもはあまり気にしない占いに1位だからか聞いてしまう。
ーー今日は何かいい進展が起こる日!今日は何事からも逃げないで挑んでみるといいかも!ラッキーアイテムは・・・ーー
「なにか進展がある?」と少し浮ついた声。ラッキーアイテムはメロンパンらしい。なんの関係があるのかさっぱりわからない。が、この占いはよく当たると噂されてるのは事実だった。
そういえば今何時だ?と青少年はテレビの時計に目を向ければ表示されてる時刻は11時37分。
時がとまったようにピタッと動かなくなった青少年。だんだん顔が引きつっているような気がする。
青少年は「やべ!」と声をあげて着替え始めた。手に取ったのは学生服。青少年は高校生だった。青少年の学校はこの家から約30分で着くところにある。自転車でいけば約15分なのだが、どっちみち時間が時間。遅刻決定だ。
青少年は着替え終わると鞄を持ち、ロフト付きの1DKの家から出た。
遅刻確定なのはわかっているので、ゆっくりと歩き出す。この速さの徒歩だと約40分くらいだろうか。
昼休憩中に着けばいいやと適当に考え、また欠伸をした。
そして学校に着けば午前の授業は終わっており当然教室は皆ばらけて昼食中だ。授業中のあの静けさの中、一人教室に入るのはまだ慣れない。そう思うのは何回もその静けさの中教室に入ったことがあるからで、遅刻確定の日は昼休憩の時に来るのが多くなった。
3-Bとかかれた教室の前に立つと他の教室よりまだ静かな声が響く。
教室の扉をあければ、教室内の生徒たちは青少年に気付いていながらも目線は向けなかった。もはや青少年の遅刻癖は習慣になっているのだろう。この時間帯に来ることは皆予想済みでいつもと変わらず態度で過ごしていた。
けれども青少年も仲のいい友達もいるわけで、視線が向くのはその友達くらい。
「はよ。」と挨拶をすれば、「哉汰・・・、お前また遅刻。」と苦笑で返された。
青少年の名前は清水哉汰。
現在高校3年生の17歳だ。
「飯食った?」
「いや、食ってない。」
「だろうと思って、ほらメロンパン。」
「メロンパンかよ。」
「嫌いじゃないだろ?」と笑いながら哉汰に差し出すこの青少年。
「さんきゅ、詩音。」
詩音と呼ばれた青少年は哉汰の親友。
神谷詩音。同じクラスメイトであり、哉汰のよき理解者だ。
哉汰はメロンパンを受け取ると、先ほどの占いを思い出した。そういえばラッキーアイテムってメロンパンだったような、と。詩音は「それ、今日のラッキーアイテム。」だと言ってきた。さすが俺の親友。なんて思いつつメロンパンをかじる。
さっきまで寝ていたのに関わらずまだ眠いとメロンパンをモグモグしながら哉汰思う。
それも昨日、とある知り合いから明日話したいことがある(つまり今日)と連絡が来たのだ。哉汰はそれが気になってしょうがなく色々な事を考えていた。気づいたら夜遅く、時間もわからず寝落ちした結果が今日の寝坊と繋がった。
そういえば、いつ何処で待ち合わせなどしていないな。
哉汰はまだ覚めない頭でぼーとしながら考えた。
そんな哉汰を見て詩音は今思い出したという顔をし「あ。」と呟いた。それに反応したのか詩音に顔を向ける哉汰。その顔は?マークが浮かんでいる。
「そういえば、五十嵐のおっちゃんから連絡来たよ。」
それを聞いた瞬間哉汰は目を見開き、勢いよく座っていた席から立ち上がった。いや、飛び上がったが正しいのだろうか。その勢いで詩音の肩をつかんだせいか、詩音が少し痛そうに顔を歪めている。
いつ連絡がきたんだ。この学校にきたのか。なんて言ってた。色んな言葉が紫音に飛び交う。それを冷静に、落ち着けと哉汰を正すと肩を掴まれていた手をゆっくりと離した。
哉汰が落ち着いたのがわかれば、紫音は1回息を吐き言った。
ー1時半までに来い。だってさ。

