身体が鉛のように重い。
手を動かそうとしてみるが、身体がいうことを聞かない。
視界は真っ暗。此処はいったい何処だろう。
そんな疑問が浮かんだ時だった。

今まで静かだった空間に音が微かに聴こえてきた。
身体が正常になり始めたようだ。
手を少し動かしてみる。そして瞼をあげようとしてみるが、開けるなと身体が指示してるかのように開きそうにない。
自分の身体なのに自分の身体じゃないみたいだ。
せめて音だけでもと、耳に集中すればはっきりと聴こえてきた〝音〟。
人のざわめき声が近くで聞こえる。
なんだろう。何かあったのか?自分の状況がわからず何にざわめいているのかもわからない。
そんな中に大きな声が響いてきた。

「五十嵐警部!!」

「石井何があった。」

「奥に子供が・・・!!」

人の話し声だ。そして警部という単語からして警察が来ているようだ。
警察と、人のざわめき声。なにか事件があったのだろう。
思考だけが働き、音を広いながらなんとか状況把握をしようと頑張る。
そして音を聞き取っていると、誰かの足音が自分に向かってきているのがわかった。
そして誰かに肩を掴まれる感触。
どうやら触感はあるらしい。
「意識はあるか?!」と身体を揺さぶられると、さっきまで開かなかった瞼が自然と開いた。

最初に見えたのは警察官の服。そしてゆっくり顔をあげれば警察官が持っていた懐中電灯の光が自分に向いており、眩しさに目を細めた。
多分さっき音で聞き取った警察官二人組が目の前にいる。
大人がそばにいるとわかったからか、何故かまた瞼が重くなってきた。安心、したんだろうか。
そして、自分でいった〝また〟に引っ掛かりを覚える。

「直ぐに保護しろ。」

同じような経験をしたことあったっけ。と、警察官の一人が何かを喋ったのを最後に耳にし意識を飛ばした。