人の心は複雑怪奇だ。
心の大きさも深さも計り知れない。
真実というものは、はっきりしないものだ。
でもそんな真実を乗り越えないと、偽物の人生を送ることになる。どんな真実も受け入れるべきだ。
見えるものが全てではない。
夏海の事をふと思い出してクスッと笑う。
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丸林が乗った車が学校を去っていくのを見届けた夏海は、フェンスから離れて屋上の出入り口へ歩いて行く。
『生きている限り、取り返しの付かない事はない』
丸林にとって人生の最大の分岐点、選択次第で運命が大きくガラリと変わる。彼は私が示した分かれ道を迷う事なく選び、前へ進み始めた。
でもどちらが幸せだったかなんて、進んでみないと分からないものだ。
丸林が見据えていた未来は、きっと明るい未来に違いない。
夏海はそう信じて、屋上の出入り口の取手に手をかけて、バタッと扉が閉まった。



