夏海は丸林の久しぶりの笑顔に引き込まれていると、急にキーンと耳鳴りがし始め、目の前に映る背景が止まる感覚に陥る。
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どこからか視線を感じる。そして、車のエンジン音が微かに聞こえてきた。
校門前で誰かを待ってる?
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不思議な感覚から解放された夏海は、屋上のフェンスの方へ小走りして、フェンスに両手を掴み、視線を感じる地上の方へ見下ろした。
黒い車が一台、校門前に止まっていた。
「ねぇ、あれ丸林の家の車じゃない?待ってるんじゃないの?」
後ろを振り返り丸林の方を見ると、ポケットに両手を入れて、空を見上げる丸林がいた。
「あぁそうだった。そろそろ行こうかな」
そう言ってスタスタと屋上の出入り口へ歩いて行く丸林の背中を見ていたら、前を向いて歩きながら「じゃーな」と言いながら右手を上げた。



