「とにかく、生きてはいけるんですね」
丸林は西岡に笑ってみせた。
「ただ…幸せではない」
そう言われて、丸林の笑顔が消えて俯いてしまう。
西岡は丸林の肩を組み、「お前にも好きな人が出来たのか…」
感慨深そうに呟く西岡に対して、嫌そうな顔をして出ていこうとする丸林。
「ちょっと待て、相手は誰なんだ?」
言い逃げをするように教務室を出て行った丸林の背中を見届け、コーヒーを自分のデスクに置く。
本棚の上に伏せて置いていた写真立てを手に取り、写真を眺める。
「先生、僕は卒業まで見届ける事が使命だと思っていましたが、それは叶いようです。僕の力不足なのかもしれません。
しかし、あなたの息子は僕の知らないうちに大きく成長してましたよ」
写真に写っているのは、西岡の高校卒業時と当時担任だった丸林の父親だ。写真立てを綺麗に本棚の上に立て直した。



