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自動販売機の前に立って財布から100円玉を手に取り、ボタンをポチッと押した。


ジュースのタブに指を引っ掛けるが、なかなか開かない。


もたもたしていると、横から手が伸びてきてジュースの缶を取られた。


顔を上げると堀澤が、いとも簡単にジュースのタブを開けて、「んっ」と手渡しされた。



「ありがとう」



ジュースを受け取り一口飲んだところで、堀澤は自動販売機に寄りかかり腕を組む。



「どうしてあいつの為に勉強を教えてあげるんだ?」


「丸林の事?今ね、丸林とある"賭け"をしてるの」


「賭け?」


「もし次の試験で私に勝ったら『誕生日を祝って欲しい』って」


「んで、坂尻が負けたら?」


「髪を黒く染めて短髪にする。どう?賭けにしてはちょっと優しすぎたかな?」


「へぇ〜、面白そうじゃん‼︎」



鼻で笑う堀澤は、坂尻の横顔をじっと見つめる。