キッチンにいた母親が2人の会話を聞き、終わったところを見計らい、階段のふもとで丸林に声を掛ける。



「晩御飯は食べるの?」


「食べて来たからいらない」



母親はキッチンに戻り、丸林の為に取っていたご飯を眺める。



「私の作ったご飯、一度も食べてくれないのよね…」



寂しげに独り言を呟く母親の背後を弟が通り過ぎる際に、取っていた丸林の晩御飯に気づき



「食べないって?じゃあ俺が食べる」



弟はお皿を取り上げて、テーブルに持って行き黙々と食べ始める。




部屋に戻った丸林は扉をきちんと締め、背中に背負っていたリュックを下ろして中身を雑に机の上に広げた。