高原を見れなくて、顔をそらした。 「先輩、ちゃんと聞いて。」 正面には高原の顔。 思わず、後ろに身を引いた。 すると倒れた椅子にぶつかってしまい、体勢を崩した。 床にぶつかる!そう思って、反射的に目をつむった。 けれど不思議と痛みを感じない。 目を開けてみると、高原が私を庇って下敷きになっていた。 「ごめん!だいじょ…きゃぁ。」 高原が私を引き寄せた。 一瞬のことで、私は高原の腕に包まれた。 いわゆるハグ。 高原の腕の中は、想像よりも広くて温かい。