「返して。」 高原の持つボールを奪おうとする。 けれど、決してボールを返そうとしない。 「力づくで、取ってみてくださいよ。」 私はボールを掴む手を放す。 新しいボールをとろうと、高原に背を向けた。 瞬間、腕を掴まれる。 高原の腕の中にあったボールがたやすく零れ落ちた。 「何するの。」 高原は何も話そうとしない。 真剣な目で見つめるので、どんな反応をすればいいのかわからなくなる。 いつものような明るい雰囲気じゃない高原に焦りを覚えた。