『え……そうなの?』


嘘でしょ。

なんで??



『なんか…親が言ってた。
YUMENOプロモーションの社長と
俺の親が知り合いだから』







待って、そんなの聞いてないよ!!!










『でもありえねーよな
お前も詩音って名前だけど、
あのshionとは思えないほど可愛くないし』


そう言って馬鹿にして笑う橘くん。


屋上で遭遇したときから
橘くんは本来の腹黒い橘くんと
同じ態度で接してくるようになった。


可愛くない なんて言葉、
普段だったらムカついてるけど

今はそう思っていて頂きたい!





『…』




何も答えられないでいると、
橘くんは家の門をくぐって近づいてきた。



『……ちょ、ちょっと
人の家に勝手に入ってこないでよ』



『別に中には入ってねーからいいじゃん
敷地内ってだけで』









それから沈黙が続く。

本当にバレたくない、バレたくない……






すると、いきなり橘くんは
私のメガネに触れた。






待って、外されるの?




不安で鼓動が早くなる。
その音を聞きながらぎゅっと目を瞑った。



『……夢野、目開けろよ』







目を閉じていても分かる。



橘くんは私のメガネを外したんだ。




『……嫌』


『は?なんで嫌なんだよ』



その声にびっくりして、怖くて、
閉じていた目をあけた。