「よも、おかえり。とももみあもずっと待ってたのよ」

 優しく私を出迎えてくれた声。
 顔を上げれば、栗色の髪を1つにまとめ、可愛いエプロンをした美女が私を見下ろしている。

「ただいま、お母さん。とりあえず2人とも預かってください…」

 弟と妹に潰された私をリビングから出てきたお母さんはケラケラと笑う。

 お願いだから早く家に上がらせてください…。

 お母さんの手によって救出された私は、ようやく靴を脱いで家に上がることが出来た。

「ねーね!あのねあのね」

「ともくん。お姉ちゃんのおててはばっちいですよ~」

「ねぇね、おててきゅっくっ」

「みあちゃんそうだね。きゅっきゅっしなきゃだね~」

 家に上がれたはいいけど、今度は前から後ろから抱きつかれて動けない。
 でも、甘えてきてくれる2人に怒れない。こういう時は上手く言って、一緒に動いてもらいましょう。

 右手も左手も小さな手に掴まれて、洗面所に連れて行かれる。
 お母さんは少しだけ呆れたように笑ってリビングに一足早く戻っていく。