1人ぼっちと1匹オオカミ(上)


「あ、ねーね!!」

「え?」

 振り返ると、保育園の服を着た智希が走って来るではないですか。え、お母さんは!?

「ねーね!」

「ともくん、お母さんは?」

「ねーね、ぎゅうってして!」

 ともくん、だからお母さんはどこですか!?
 そしてお望み通り抱きしめている私も私ですが!

 私の胸に顔を埋めている智希は本当に嬉しそうに微笑んでいます。
 はう、天使…。


「とも!!」

「あ、ねぇね~」

「お母さん!」

 よかった。お母さんは望亜と一緒でした。
 この様子だと智希がまた走って行ってしまったんでしょうね。

 お母さんは安心した様子で、のんびり歩いてきます。
 よちよちと懸命に走ってくる望亜がかわい過ぎます。

「もう、ともったら急に走り出すんだから」

「だって、ねーねいたもん」

「ねぇね、だっこちて?」

 ようやく私の元にたどり着いた望亜が足に抱きついてきます。
 抱っこしたいのは山々ですが、智希が離れてくれません。

「ともくん、みあちゃんと交代だよ」

「やだ!」

「ともくん?」

「やだ!」

 珍しいですね。智希がこんなに嫌がるなんて。望亜は泣かないで~。

 お母さんが抱っこしても、望亜はずっと私に手を伸ばしてきます。あう、かわいい…。