1人ぼっちと1匹オオカミ(上)


「大宮!」

「神野、近すぎなんじゃないの」

「あ?」

「晴野さんと、席、近いんだよ」

 先生の言葉など雷斗くんに届いていませんね。バトル再開。あう、お邪魔です。

「…晴野、こっち来い」

 先生が呆れて私を呼びます。素直に用具を持って、先生に示された席に着きます。ふぅ、解放された…。

「先生、俺教科書…」

「貸すから神野は動くな。大宮、お前も席違うだろう」

 雷斗くんは先生の言葉に素直に一番後ろの席に戻りました。
 神野くんは表情を険しくさせながら、先生の差し出した教科書で感想を書きはじめたようです。

 30分も時間があれば十分ですね。授業終わりに先生にノートを出すと、苦笑いされました。

「晴野、放課後分かってるな」

「はい。よろしくお願いします」

 先生は1つ頷くと、教室を出て行かれました。