「晴野?」

「…ごめんなさい。私…」

「…俺は、晴野が嵐鬼に入ってようが、入ってなかろうがどうでもいい。…晴野、お前嵐鬼の誰かの女なの?」

「ッ!?違います!私は誰ともお付き合いしていません。それに、嵐鬼は…ッ」

 急に声が詰まって出なくなる。

 これは自己防衛。いつも口走りそうになった時に必ずそれ以上は言わなくなる。

 分かってる。

 でも、神野くんにでさえ、私は言うことが出来ないのですか…。


「…晴野、俺の話聞いてくれないか」

「え?」

「嫌なら途中で逃げてもいい。だから、ちょっとした昔話、聞いてくんない?」

 そう言いながら、神野くんは図書館の机に腰を降ろしてしまいました。行儀悪いです。

 座れば?という神野くんに1番近くにあった椅子を引き寄せて座りました。

 神野くんは私が座るのを見て笑うと、突然表情を歪めて上を向いてしまいました。

「俺、親いねぇんだ」