家に着き、鍵をあけ中へと入る。

まだ片付いていない段ボールの山。

これからずっと一緒に暮らす俺達の新居。

「手術…」

そうなると、一週間後の結婚式は…

「延期か…」

怪我の具合にもよるがそうなるだろう。

取りあえず式場にも、出席者にも連絡して…

やらなくてはいけない事はたくさんあるのに体が動かない。

取りあえず荷物持って病院に戻らなくては。

帰宅中に届いたおじさんからのメールを見ながら俺は支度を始めた。

荷物を持って病院に戻る頃には時計の針は五時を指していたが、手術中のランプはまだ消えていなかった。

手術など初めての事で、四時間というのが長いのか普通なのか分からない。

分からないが、時間が経てば経つほど不安が募っていく。

ようやくランプが消えたのはそれから一時間後で、俺達は先生からの話を聞く事になった。

出血が酷かった事。

数か所の骨折。

頭を強く打っている事。

一命は取り留めたが油断は出来ない事。

もしものことがある事も頭の中に入れておいてほしい。

「翔子が…」

目覚めないかもしれない?

この後の記憶など、俺にはなかった。

気が付くと俺は家に戻っていて、その場に立ち尽くしていた。