「なに、やだ。なんなの急に。」

わざわざ独り言を拾ってまで凄い嫌そうな目でわたしを見てくるこの女は中学校からの友人、有江 瑠里子。まぁ、簡単に言えばグループのリーダーみたいな存在で、怒らせると恐い。いや、恐かった。

「でもまぁ確かに、高校三年間なんてあっという間、卒業して進学しても就職してもあっという間に2年が経って成人式。で、ハタチ越えてからは倍速で年取るって言うもんねー。」

苦笑いしながら恐ろしい未来の分析をしているのは 美萩野 桜愛。桜に愛って書いて サラ 。彼女も中学校からの友達。基本的には優しい。

「二人ともやめてよ!有り得そうで恐いわ!」
「有江 瑠里子 だけに 有り得る!って?」
「もう飽きたし、つまんないから!!」

お昼休み、クラスの仲の良い三人で輪になって昼食、談笑。普通だ。普通過ぎて輝きもなにもない。

「ねぇ、やっぱりバンドじゃない?バンド!」
「またその話?やだよ。お金かかるし音符読めないし。」

中学時代はできなかったこと、それをやればわたしのパッとしない高校生活が輝く気がして、

「なんで!バンド!いいじゃん!絶対いい!」
「でも高校入ってバンド組むって、なんかベタ過ぎて逆にダサくなーい?」

ルリに一蹴されて、サラにトドメを刺される。
しかもダサくなーい?って…
今日はちょっとキツくなーい?



これも日常。いつも通り。
普通すぎて、気持ち悪くなるくらいだ。


「あーあ。こんなはずじゃなかったんだけどなー。」



誰かが言った。

高校生活、それは人生で最も輝く三年間。

そんなの、嘘だ。