第六魔法学校の紅と碧


「店には行かない。ウチガワに入れば、俺の家がある」
「お前の家!?」


茜は思わず素っ頓狂な声を上げた。

恋人はおろか、男友達すらいない茜は、男子の部屋に入ったことがない。ましてや、好意を持った男の部屋になど。

顔を赤くする茜を見て、ビルとビルの間の路地を走りながら青年は呆れた顔をした。


「何赤くなってるんだ」
「お前、会ったばっかの女子を家に誘うなんてどうかしてんぞ!」
「どうかしてるのは君の頭だ!」


そんな言い合いをしながら、やがて二人の目の前に高い壁が現れた。


「おい、行き止まりじゃねーか。どうすんだよ」
「問題ない」


青年は足を止めず、壁に向かって走り続けた。ぶつかる、と思って目を閉じた茜だったが、予期した衝撃はいつまでも訪れず。

二人の姿はそのまま、壁の中に吸い込まれていった。