第六魔法学校の紅と碧



「……は?」
「助けてくれてありがとな! あたし、茜! 久住茜! なあ、名前は? 名前! 名前教えて!」
「何言って……」


困惑する青年は、掴まれた茜の手を振り解こうとして、さらに驚いた顔をした。


「なんだこの魔力は。君は一体……」
「なあ、聞いてんの? 名前くらい教えてくれてもいいじゃん!」
「待て、今はそれより……」


言いかけて、青年はハッとした顔で茜の後ろを見た。そして間髪入れずに弓を引き、茜の背後に現れた敵を貫いた。

先ほどのそれよりは小さいものの、黒い物体は無限に湧いて出てくる。青年は茜の身体を俵を担ぐように抱き上げて走り出した。


「えっ、逃げんの!?」
「あんな数相手にしてられるか。それより君は何なんだ。何故こんな時間にここにいる? 奴らは君の魔力に釣られてるんだぞ」
「マリョク? なんだよそれ。知らねーよ」
「知らないはずがない。そんなに魔力を垂れ流しておいて……」
「だから知らねーって!」


青年は茜に負けず劣らずの運動神経で、軽々隣のビルへと飛び移る。

彼が言う魔力とやらについては、当然茜に心当たりはなかった。

茜はそれよりも、自分以外にこんな人間離れした身体能力の人間は初めて見たので、仲間を見つけたかのような気持ちになっていた。ますます彼への好感度が鰻登りだ。彼のことがもっと知りたい。