第六魔法学校の紅と碧


その瞬間、光の矢が目の前の黒い物体を貫いた。

一つ眼の敵はそのまま黒い霧のようになって雲散し、跡形も無く消えていく。

代わりに、どこからか飛んできた学ラン姿の青年が、呆然と目を見開く茜の前に降り立った。


すらりと伸びた足と、均整のとれたシルエットの体躯。肩口までのさらさらの黒髪は、男子にしては長めの髪型だが、それがむしろ似合ってしまうほど美しい顔立ちをしていた。

彼は光る弓を携えており、先ほどの矢を射たのが彼であることがわかる。

静かな知性を感じさせる切れ長の瞳が、茜を見下ろした。


「怪我はないか」


冷たさすら感じるほど落ち着き払った声色で、彼は茜に声をかけた。


だが、茜は返事ができない。声も出せずに青年を見つめたままだ。

それを見て青年は短く嘆息すると、少し哀れんだような目をした。茜の様子を、恐ろしい目に遭ったから呆然としているのだと解釈したようだ。


「……身体が無事ならいい。今起きたことは全て幻だ、忘れろ」


言いながら青年は茜に近づくと、手のひらを茜の頭にかざそうとしてーー


「見つけた!」

その手を掴んだ茜が叫んだ。



「あたしのヒーロー!」



嬉々として言い放った茜に、青年が目をむく。